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猫がかわいくなかったら 藤谷治 中公文庫 20260316
ご近所の老夫婦が相次いで入院してしまい、部屋には二人にかわいがられていた一匹の猫が残された。そのままだと飼い主不在の部屋で放置されたままになってしまう。まさか放って置くわけにはいかない。
定年まであと四年の吉岡と妻の多恵子の、いつ終わるともしれない、気力、体力ともに削ぎ落とされる日々が始まる。
猫をめぐる楽しいお話かと思ったらかなりシビアなものだった。でも実際にこういうことが今の世の中あちこちで起こってるだろうなあ、というお話でもありました。
ほんとこれは、高齢者とペットこがれからさらに増えるだろうからなんとかしないといけない日本の大問題。政治家の人たち、しっかり考えてください。
あと思ったのは「親切」というと、他人の、何か小さな困りごとを「ちょっと」お手伝いしてあげて感謝される、みたいなイメージだったのが、この作品の吉岡夫婦のご近所さんにしてあげる「親切」がそれとはまるでかけ離れたものになってしまったなあ、ということ。ほんと、お疲れ様でした。
侠飯4 魅惑の立ち呑み篇 福澤徹三 文春文庫 20260301
悪政治家、肝付泰造の秘書として働く藤堂旬一郎、28歳。
なかなかしっかりした休みも取れず、日々朝から晩まで多くの業務をこなす。
そんな彼が唯一気を休めることのできる場所が職場近くの立ち飲み酒屋「チドリヤ酒店」。そしてその店を一人で切り盛りしているのは、小梅という、旬一郎がその笑顔に惹かれている一つ下の女性だった。
ある晩、旬一郎がチドリヤ酒店に寄ると、見知らぬ二人の男がいた。彼らは酒造メーカーの人間で、立ち呑みチェーンを展開するためのレシピ開発にチドリヤを使わせてもらうのだという。そして一人の目つきは鋭く、頬に傷があった・・・。
いまハマっているシリーズの四巻目。今回の主役は悪徳政治家の秘書。はじめの方で彼の仕事内容が描かれるけど、ほんと、政治ってセコいことしてまでも金集めないとなにも始まらないのか、と考えちゃう。
どんなピンチが訪れても最後は柳刃さんたちが解決してくれるんだ、という安心感があるけども決してマンネリではないからまったく飽きることのないシリーズです。
映画化決定 友井羊 集英社文庫 20260123
漫画家志望の高校生ナオトは、昔描いた、自分の中でも傑作と思える「春に君を想う」を映画化させて欲しいとの申し出を映画部のハルから受けるのだが・・・。
高校生にして早くも実力を発揮してコンクールでグランプリ獲得もしている木崎ハルというキャラクターが強烈な作品。
映画作りの現場のありがちな出来事(たぶん)がたくさん出てくるのが楽しい。
侠飯6 炎のちょい足し篇 福澤徹三 文春文庫 20260120
27歳だけど引きこもってゲームばかりの日々を送る風見蓮太郎。見かねた父親に強引に自立支援施設に入れられてしまう。しかしその施設は、悪徳施設長が牛耳る不正の横行するインチキ施設だった。
そして施設の近くのさびれた食堂には、少しの手間で食材を最高の味に仕立て上げる、頬に傷のあるあの男がいた・・・。
これまた大満足の一冊。今作の主人公はほんとに行き詰まっちゃってる、働きもせず毎日がゲーム三昧の青年なのだけど、柳刃のおかげで目覚め、行動に出て現状を打開して新たな一歩を踏み出すことに成功。お見事な結末にスッキリ!
侠飯5 嵐のペンション篇 福澤徹三 文春文庫 20260117
奥多摩のペンションのアルバイト、湯原和斗24歳。まだやりたいことが見つからない。
宿泊客のフリーライター葉月によると、まもなく時効となる10年前の5億円強奪事件に使われた車がこの付近に乗り捨てられていたという。5億円はこの近くに隠されているかもしれない。
他の宿泊客はみな怪しい者ばかり。そんな中、新たな客、頬に傷があり、目つきの鋭い、そしてなぜか料理に精通している男がやって来た・・・。
うだつの上がらない上に切羽詰まった状況に陥った青年が、おっかない謎の男から料理の技と生き方を教わる。
そして周辺で起きたミステリーをその男が解決し、青年に別れを告げ去ってゆく。
青年の心にはもはや迷いは無く、次のステップへと歩き始める・・・
みたいなお決まりのパターンが確立されていて安心して読めるシリーズ。
水戸黄門じゃないけどそれに近い、完成度の高い作品だ。偉大なるマンネリ。言う事なしです!!
パンとスープとネコ日和 群ようこ ハルキ文庫 20251227
突然亡くなった母の営む食堂を継ぐことになったアキコ。
継ぐ、といっても母が切り盛りしてたような、常連さんたちが酒を飲んでワイワイやるような店ではなく、料理も内装もシンプルな店だった。
出版社勤務時代に得た知識や人脈をもとに、食材にこだわり、ともに働く相手を面接で選び、着々と準備をすすめるアキコ。
そんな彼女の唯一の家族は、ネコのたろだった・・・。
大事件が起きるわけではないけど、なぜかどんどん読み進めてしまう。そして「派手じゃなくて、こういうしみじみするお話もいいかな」と思って読んでいたら終わりの方で、けっこう個人的にはずーん!、とくるエピソードがあって驚いた。と同時にアキコさんの気持ちに「わかるわかる、そうですよねえ。そんなことがあったらそう考えちゃいますよ」と寄り添い、頷きながら読んだ。
食い意地クン 久住昌之 新潮文庫 20251208
「孤独のグルメ」の原作と、テレビ化されたときの、番組最後に登場して主人公である井之頭五郎が入った店を実際に訪れていた方の著書。
その他多くの著作がありそう。かなり前に読んだ、夜行列車に乗る男が弁当のおかずの食べる順番に悩みまくるのもこの方の原作のはず。あれも大笑いでした。
今作は、カッコつけた食べ物ではなくてラーメンだったりカレーだったりおにぎりその他お茶漬け、焼きそば・・・などなど身近な食べ物が続々登場して「そうそう、わかるわかる!」と納得できる目線の美味しさポイントがたっぷり詰まった一冊。
なかでも一番共感したのは「大根」かな。鍋とかうどんに入れて食べるのが大好きなので。もちろん大根おろしも美味しい。
侠飯3 怒涛の賄い篇 福澤徹三 文春文庫 20251203
ヤミ金業者店長で、どんな手を使ってでも金を取り立て成績を上げいつか足を洗い合法的な事業をはじめる、それだけを考える渋川卓磨27歳。
あるやくざの組長宅の地上げを命じられるが、それは一度も逢ったことのない祖父の組だった。
渋々交渉に向かったが頑固な祖父、伊之吉は決して立ち退きに応じようとはせず、成り行きで卓磨は行儀見習いとして住み込むことに。
そして謎の客人、目つきが鋭く、頬に傷のある男が現れる。彼はしばらく厄介になる礼にと、毎日の食事を作るという・・・。
シリーズ第3弾。今回はある組長宅が舞台。最後は無事問題も解決してほっこりするから安心して読める、と思うけれどそこにいくまでには、祖父に立ち退きを説得させる期限が迫り、追い込められる卓磨の苦しみがあったりしてハラハラさせられて結局あっという間に読み終わっちゃった。
柳刃、火野の二人はもちろん渋川組の皆さんに加えて梨江ちゃんもよい雰囲気。それぞれを深掘りしてもっと長くしても構いません!というくらい面白かった。
侠飯2 ホット&スパイシー篇 福澤徹三 文春文庫 20251128
まともに働いてたのに、いわゆるリストラ部屋へ送られた真鍋順平28歳。元の部署に戻れそうもなく、働く意欲も無くし、不安だらけの日々。
そんなある日、同じくリストラ部屋に送られた同僚と昼ごはんの店探しに苦労していると、会社の裏側の空き地に停まっているキャンピングカーで500円の日替わり弁当を販売しているのを発見。
その味は今の最悪の状況を忘れさせるほどの美味だった!そして店主は無愛想で、頬に傷のある、どう見てもおっかない男だった!!
だいぶ前にこの前作のドラマ化されたものを見てあまりに面白かったので原作も読んでみたました。文字で読んでも面白いかな、と不安もあったけどそんな心配は無用だったし、今作も読み終わるのがもったいないほどあっという間に終わっちゃった。こちらも同じキャストで映像化希望です!!
二度目の過去は君のいない未来 高梨愉人 集英社文庫 20251122
列車に飛び込もうとする教え子の少年を助けようとホームに降りた教師とその妻。気がつくと二人は10年前にタイムスリップしていた。しかも教師は大学生、妻は小学六年生の姿となっていた・・・。
時間ものは好物なので楽しめたのだけど、ああいう終わり方だったのが自分としてはちょっと残念。カッチリ終わらせて欲しかったかな。
「結局あの件はどうなったのかな?」と考えちゃう箇所が残っちゃってて。かなり魅力的なキャラクターが途中から出てきたのに宙ぶらりんのまま終わるのかあ、とか。「テセウスの船」というドラマのときも似たようなことを思ったような。
でも余韻を残したかったのか。それかもしかして続きがあるのかな?
強運の持ち主 瀬尾まいこ 文春文庫 20251112
短大を出て就職したものの、上司と会わず半年で辞めてしまい、バイト情報誌で見つけた占い師の仕事をするルイーズ吉田こと吉田幸子。
彼女のもとを訪れるのは、母親と父親のどちらを選ぶべきかに迷う少年、ある男性を振り向かせる方法を求める女子高生、「おしまい」がわかるという謎の関西の青年などなど・・・。
この作家さんのお話、というか主人公たちのやりとりってほのぼの、ともほんわか、まったりというのとはまた違う柔らかい感じがして読んでいてとても心地よいのです。
今作だとルイーズと、一緒に暮らす通彦との場面。会話と同時に進行する通彦アレンジの楽しい異物が入った料理が出てくる食事シーンにもニンマリしてしまう。
そしてまたこのお話も、他の作品同様終わり方が文句無しなのでした。
気がつけば、終着駅 佐藤愛子 中公文庫 20250812
1923年生まれの大作家の「婦人公論」における50年に及ぶエッセイの数々。
どれもこれも思うがままに本音をぶちまけてるのが爽快。
壮絶な人生なのに思わず笑っちゃうエピソードもたくさんあったりする。
そんな中にあってシリアスに突き刺さったのが
「戦争を体験したことで、国はかならずしも国民を守ってくれないということが身に染みましたのでね」
という言葉。戦争なんてろくなもんじゃない。
老残のたしなみ 日々是上機嫌 佐藤愛子 集英社文庫 20250802
年をとること、健康のこと、子育て、教育、報道のあり方、いたずら電話、友情、読者、霊能力などなどありとあらゆることについてのエッセイ。
もっと早くに読んどくべきだった本の一冊!こんなに面白くて痛快で「そうそう」と頷きながらすらすら読み進められるのだから売れるわけだ。
だから今の世の中なんだかおかしい、と思っててこれを読んで「やっぱり今の日本はおかしいや」と再認識してる人もたくさんいるはず。
憲法9条を世界遺産に 太田光 中沢新一 集英社新書 20250729
正義なんて、国ごとにどころか、それを意識する人によってさえまるで違うわけだから「これが正義です」なんて定義するのは不可能。
でも「人を殺しちゃいけないよ、戦争はいけないよ」っていうのだけは絶対のはずだから、戦争を放棄するこの九条は変えちゃいけないのではないか。
あっ、でも、もし宇宙人が攻めてきてみんなが一致団結して戦うのはいいのかな?
シャーロック・ホームズ傑作選 コナン・ドイル 集英社文庫 20250714
シャーロック・ホームズという名探偵が・・・なんて説明は不要でしょう。
久しぶりに読みたくなった。
この「傑作選」には残念ながら宿敵モリアーティ教授は出てきませんが、あの「アイリーン・アドラー」登場の話は収録されてました。
久しぶりに読もうと思ったときに、また語り手であるワトソンへのキツい突っ込みを楽しむめるかと期待しちゃったのだけれど、今回の収録作にはあんまりそういう要素は無くて、逆にワトソンを友と認めるセリフがちらほらと見受けられたような気がします。
それにしてもこのキャラクターほど手を変え品を変え映像化された人はいないんじゃないかと思うくらいの大ヒットキャラクターですね。
むかーしNHKでもやってたジェレミー・ブレットという渋い俳優さんのテレビシリーズが決定版らしいです。確か吹替が「太陽にほえろ」の山さんだったかな。
賢者はベンチで思索する 近藤史恵 文春文庫 20250701
久里子は近所のファミレス「ロンド」でウェイトレスとして働く21歳の女の子。といってもアルバイト勤務なので将来への不安もあるし、篭りがちな弟、職場の新人で気になる男性の存在・・・などなど悩みは尽きない。
そんな久里子の周りで起こる幾つかの事件と、解決へと導いてくれる意外な人物・・。 面白かった!ピシャッと見事に決まる結末ではなくて、ほろ苦い部分もあるけれども、すべてが良い方向にへ向かうだろう的な終わり方が素晴らしい。ビートたけしと北野武 近藤正高 講談社現代新書 20250615
「大久保清事件」、「三億円事件」など映像化された事件とともに、当事者を演じたたけしを論じた一冊。
昔から、実際の事件を題材にしたたけし主演のドラマがときどき放送されてることは気づいていたけれど、見たことは無かった。再放送してくれないかな。事件をもとにしものではないけど「刑事ヨロシク」もまた見たい。
大人になったら、 畑野智美 中公文庫 20250531
カフェ、キートスで副店長として働く葛城命(メイ)。35歳を迎えた彼女は、仕事に頑張り、何でも話せる友人にも恵まれてはいるが、8年前に長く付き合った相手と別れてからこれといった出会いも無いまま。
なのだけれど生意気な後輩と衝突したり、今後のことに悩んだりの毎日のなかで変化ははじまりつつあった・・・。
初めて読む作者さんだったけど大当たりでした。単純に「あーよかった」だけじゃない、いろいろ悩みまくったけど相応しい相手と出会い、無事にふんわり着地するような終わり方も最高。
大切な友人であるみっちゃんに大ちゃん、キートスの常連の鯨岡さんに羽鳥先生、ちょっと生意気な後輩、杉本くんにバイトのレナちゃんや行きつけのバー、ストロボのマスターなどなどメイを取り巻く人たち、一人一人、それぞれの立場で一生懸命に考えて生きているのだなあ、と。
映画を早送りで観る人たち 稲田豊史 光文社新書 20250520
今の世の中、映画やドラマを早送りで観る人が大勢いるという。
それはなぜか。いつ頃からなのか。どういう人たちがそうしてるのか。
映像作品を早送りで観てしてしまう人たち、そして、せっかくの作品をそのように「消費」されてしまう作り手側双方の考え、思いを取材しその大きな疑問の答えを求める一冊。
・あらかじめストーリーが分かってからでないと観ない
・好きな俳優の場面以外は飛ばす
・主人公が苦労する話は嫌い
この本の中には、上記のような人たちがいるという衝撃の事実が多数出てくる。
ただし、そうすることになった大きな原因として『圧倒的な時間の足りなさ』があるということがわかると、そりゃ仕方ないや、とも思ってしまう。
でもそういった人たちが多数になれば(もうなってる?)、それが「常識」になってじっくり1倍速で観る人が変な目で見られちゃうのか?
それは一生懸命に作品を作り上げた人たちも嫌になっちゃうだろうし、なんか寂しい。
やっぱり作り手が意図して見せてくれる、独特の間だったり、「えー、なにそれ!」という心地よい驚きなどで我々を楽しませてくれるのが映像作品だと思うのだけれども・・・。
おんぶにだっこ さくらももこ 集英社文庫 20250511
幼少時代のさくらももこ、ももちゃんなりの考え、悩みが爆発した一冊。
子供の考えることだし、微笑ましいな、というだけの話には思わない。まだ広がっていない知識の限りを尽くして想像した結果恐ろしい結論に達してしまい恐怖する。
大人からすると笑っちゃうエピソードの数々かもしれないけれど本人にとっては大問題。
「大規模な心配」など、わかるよ!わかりますよ!と言ってあげたくなったり、最大級に切なくなる箇所がいくつもあったり。
ハッピー・チョイス 中島たい子 集英社文庫 20250504
39歳の独身女性作家、本田貴世(きよ)。彼女が蕎麦打ち合コンで知り合った男性と理想の結婚を目指すお話。
理想の男性を求めてドタバタ奮闘するコミカルなお話と思いきや、かなり「結婚」というものを本気で考えるお話でした。楽しいながらも真面目な小説。
主人公である貴世の担当の小野くんや、主人公の両親など出番は少ないながらも面白い人たちが印象的。
そして何より、あそこまで頑張ってからの結婚パーティーでの貴世のまさかのスピーチ!
これにはビックリでした。怪笑小説 東野圭吾 集英社文庫 20250411
昔読んだ同じ作者さんの「毒笑小説」を勧められて読んだときは本当に大当たりで大笑いできたのだけど、これまた笑うお話しのオンパレード。
と思っていたら、突如としてあまりにも切なく、あまりにもやるせない、余韻が半端ないお話の登場には驚いた。ぜひぜひいろんな人に読んで欲しいお話。だって誰もがぶち当たる、避けられないことについてのお話だから。
あんなに短いのに主人公の心情の移り変わりがすごい密度で容赦なく降りかかってくる。
シカゴ・ブルース フレドリック・ブラウン 創元推理文庫 20250320
父親を何者かに殺された青年エド・ハンター。叔父のアンブローズと共に犯人探しに乗り出す。
昔からこの作家さんの「SFっぽい」短編はよく読んでいたけれども、ミステリはほとんど読んだことが無かった。長編も「発狂した宇宙」と「火星人ゴーホーム」くらいかも。
この作品、犯人捜しの物語ではあるけれども同時にエドの成長物語でもありました。アンブローズにしごかれながらの成長かと思いきや、この叔父さんがあれこれと探偵業の指南をしてくれるのだけれど、彼に対する接し方が優しくて、また粋なのがたまりません。
エドは18歳、印刷会社の見習いなのに、親を何者かに殺されるというショッキングな出来事にもめげず頭を回転させ次々と起こるピンチに対処していく。人によっては都合よいな、と思うかもだけれど私は逆に頼もしいなと思ったので心地よく読み進められました。
あと、エドの前に現れるある女性とのやりとりも何ともいえない余韻があってよいです。
アンブローズ叔父さんとの活躍がシリーズ化されてるとのことなのでいずれ読んでみたいところ。
アウルクリーク橋の出来事 ビアス 光文社古典新訳文庫 20250311
「悪魔の辞典」で有名な作家さんの短編集。皮肉たっぷりのお話がたくさん収録されてるのかと予想したけれども、どことなく幻想的な幽霊話集、といった感じ。
前から気になっていた表題作をやっと読めた。
敵につかまった男が絞首刑となり、もう一巻の終わり、というところで縄が切れて下の川に落ち、なんとか兵士たちの銃弾も逃れて愛する妻の元へと逃げるのだけれども・・・というお話。
オチは知っていたけれども、読めてよかった、と思える傑作だ。
映像化されて「トワイライトゾーン」の一話として放映されたものもぜひ見てみたいところ。
未来いそっぷ 星新一 新潮文庫 20250215
「ボッコちゃん」と同じく、何度も何度も読んだ星新一のショートショート作品。
昔話のパロディというのはたくさんあるだろうけど「それもそうだな」とアリの理屈に妙に納得してしまう「アリとギリギリス」、カメのイメージが思いっきり逆転してしまう「ウサギとカメ」なんかが特に楽しい。
そして「シンデレラ王妃の幸福な人生」にいたっては「めでたしめでたし」のその後のシンデレラに降りかかる出来事の数々とそれを見事に解決してみせる彼女の姿を圧倒的な説得力で描いてみせる。
また、クリスマスイブに起きたほっこりとさせられるお話「ある夜の物語」なんていうのもあります。これがまたいい。
そうかと思えば、小説界における大問題作と言われてないかもだけど、そういっても過言ではない「不在の日」というちょっと長めの作品もあります。初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。まさか、小説であんなことが起きるなんて!!
ひとりずもう さくらももこ 集英社文庫 20250205
「ちびまる子ちゃん」の作者による「青春」にまつわるエッセイ。
「ちびまる子ちゃん」を読んだのは大学生のとき。友達から勧められて読んだら爆笑の連続。
今でも覚えているのは学校が水浸しになるお話。うっかり電車で読んじゃったものだから笑いをこらえるのに一苦労しましたっけ。
その作者によるエッセイ。初恋だったり東京へのあこがれだったりおかしいエピソードのてんこ盛り。
そんななかにも、漫画家という夢はあるけども果たして叶うのだろうか?違う道へ方向転換した方がいいのか?などと揺れたあげく、自分にふさわしい道へと修正して突っ走った先に待っていた結末はかなりグッときました。わかっちゃいたけど「よかったーっ!!」と思えるラストでした。
吉祥寺の中規模書店に勤める契約社員で文芸書担当の谷原京子。わけのわからない店長、理不尽なお客さん、売れ筋を送ってくれない取次ぎなどなどにイライラしながらも一冊でも多くの本を読者に届けるべく日々、奮闘する。
主人公の「イライラ」に共感しつつあっという間に読んじゃった。
書店にまつわるお話として文句なしでした。
が、
もはや書店の無い町が増えちゃってるのに給料安いまんまっていうのが狂ってる。
このまんまじゃ絶対にいけないのになんにもしない国ってなんなの?
読んでいてそういうことばかりが頭ん中にずっとあった。
大手書店でもない限り取次ぎは売れ筋を送ってくれないから書店員としては「客注」と嘘ついてまで店頭分を発注してしまうというのはどこも一緒なんなだなあ、と今更ながら納得。今となってはどうでもいいような、懐かしいような。
男女間に友情はありえるのか?なぜ男はおっぱいが好きなのか?お化けはいるのか?などなど人類の重大な課題についての熱い会議録。
疲れたときにこういう本は絶対に必要かと思います。考えすぎるとろくなことはないから。
あと、全編笑いっぱなしなのだけど二箇所ほどグッときたところがありました。
ひとつ目は「なぜ戦争は無くならないのか?」の中でのみうらさんの
そもそもこの世の中に正義なんてもの自体、存在するのかな?
という発言。
もうひとつは「天職とは何か?」の中で
人生ってやっぱり失敗がないと面白くないでしょ。
というもの。
なんか、心地よく突き刺さったような感じ。
合コンで知り合った美貌の白井夕紀が忘れられない冴えない男、南里遼太郎。
数年後、友人の結婚式に彼女が呼ばれていると知り、遼太郎も出席する。
二次会での憧れの夕紀との会話の中で、遼太郎はあるひとつの嘘をついてしまう。
その嘘によって夕紀の関心を惹き交際をスタートさせることに成功した遼太郎だったが・・・。
いやあ、やっぱり嘘はよくないよね、というどころではなくて最後の最後まで最初の嘘のせいでとんでもない展開がどんどこどんどこ進んでしまいます。
一体この人どうすんだろ?と気になって気になってあっという間に読み終えてしまいました。
裏表紙のあらすじ紹介文に「戦慄のクライムサスペンス!」とあるけれど、それにしては主人公としてはあまりに気の小さい遼太郎。
そんな彼が嘘に嘘を重ねまくって多くの人を巻き込んだあまりにも大きな事件を起こしてしまう。小心者でもこんなことを起こしてしまうのかと思うと恐ろしい。
小説でよかった、としみじみ。
29歳の宮路。無職だけど、資産家の親からの仕送りで生活はなんとかなっている。ただし、音楽の道へ進みたいという漠然とした思いを持つだけで具体的な展望はまるで無いまま。
ある日訪れた老人ホーム「そよかぜ荘」で耳にした介護士の吹くサックスの音に衝撃を受け、半ば強引にその介護士、渡部と組んで音楽の道を突っ走ろうとするが・・。
この主人公、宮路。仕事もせずに親からの仕送りで暮らしてるというからどうしようもないなあ、という男だと思いきや、施設の利用者さんたちに溶け込んでるのでひと安心。しかも無理に老人たちに合わせてるのではなく、本音でやり合ってるところなんか微笑ましくもあるし。
とくに口うるさい婆さん的な水木さんとのやりとりは漫才でも見てるよう。
宮路は全然「ぼんくら」なんかじゃないし、ここから大きく羽ばたくはず!
クリスマスの夜に起きた住宅の火事。燃える家の2階には逃げ遅れた10歳の少女が。
外へ飛び出してから娘がまだ中にいることを知った母親もどうすることもできない。
そこへ偶然居合わせた20代後半の男性が、何を思ったか燃え続ける家へ飛び込みあっという間に少女を助け出した。
母親、集まった人たちがほっとしたその直後、男は自分の車の助手席に少女を乗せ夜の道を走り去った•••。
なんでなんで?と思っちゃう導入部。
と思ったら全く別の、ある家庭の勝気な姉、帆名(はんな)と、彼女に振り回されっぱなしの弟、勇帆(ゆうほ)の小学生から高校までのざまざまなエピソードが語られる。
それがまた姉弟の微笑ましい出来事、といった生やさしいものではなくて過激なことばかり。こんな人が身近にいたら面白いだろうけれど家族にいたらしんどいかな、という姉のおかげで。
でもこの帆名、かなりの正義感の持ち主。というかとことんまっすぐな人。だからこの主人公、勇帆は憎みながらもどこかしら憧れもあるから余計最後、グッときます。
人によっては「?」となる事の真相、自分は納得できたし、さらに最後の最後にも驚きが。
高松翔が通う大和小学校がある日、原因不明の巨大な衝撃とともに消失してしまう。
しかし学校にいた先生、生徒たちは生きていた。彼らは学校ごと、どことも知れぬ「砂漠」に送られていたのだ。
生徒たちを守るはずの教師たち「大人」は突然の変化に対応することができず、自ら命を絶ってしまったり、狂って生徒を殺めようとしたりでまるで役に立たない。
生徒たちは自分たちで生きのびる道を探さなくてはならないが、洪水、不気味な生物、伝染病などなどありとあらゆる障害が彼らに追い打ちをかける。
ときには生徒どうしが対立し、憎しみ合いながらもどうにかして生きのび、元の世界に戻ろうと奮闘するのだが。
最初にこの作品を読んだのはある駅ビルの上にあった書店での立ち読みでした。
当時は楳図かずお作品は「まことちゃん」と「おろち」しか知らなくて「漂流教室っていう凄いのもあるよ」と誰がから聞き、どれどれ、と手にしてみたのでした。(店頭で読めたということはコミックにシュリンク袋をかける習慣以前か、又は古本屋さんだったか・・・)
『ページをめくる手を止められない』とはこのことか、というくらいの体験。そして一巻(単行本版)最終ページのあの衝撃!!!
せっかく大切な食料である給食のパンを手に入れたと思ったのに!
もう全編クライマックスの連続。ただでさえ障害がこれでもかと繰り出してくるのに仲間であるはずの友人と敵対しちゃったりしてもう大変。
すぐに全巻購入しました。
でもこのお話、サバイバルというだけではなく壮大なSF超大作(私の大好きなジャンルの)にもなっているから読後の最大級の親子愛の感動とともに「ということは、あの後どうなるんだろう?」といろいろ考えさせてくれる作品でもあります。
そうそう、当時の社会に対して「このままじゃいかん!」というメッセージもあちらこちらに込められていて、それはそのまま現在にもそのまんま当てはまるものなので、できるだけ多くの人、できれば国を動かすエラい人間たちに読んで欲しい作品です。
本が大好きな中学生、野々香がある日の放課後、一冊の本を目にするが、それはまだ発売されていない本だった・・・。
本にまつわるミステリー。昔読んだこの作家さんのお話は出版社の営業さんや、書店員さんなんかが主役だったけれども、今回は女子中学生、野々香が主人公。
彼女が、同級生たちと謎を解くだけでなく、離れてしまった人と人の間を繋ぐきっかけとなったり、「本」の良さを知ってもらうイベントにチャレンジしたりと大活躍。シリーズ化して欲しいくらいでした。してるかな?ごく普通の中学生である明彦に、本郷令子という大阪の女の子から手紙が届く。そこには、明彦の学校、家庭、友人のことをくわしく教えてほしい、とあった・・・。
昔からタイトルは知っていたものの「いつか読もう」と思いながら長い年月が過ぎ去ってしまっていた作品。
文庫で探して読もうと思ってたけど、見つけたのは「青い鳥文庫」でした。ときどき出てくるイラストページが新鮮。
「時をかける少女」と同時期に出会っていたかった一冊。
といってもいま結局出会えたのでよかったよかった。
ごく普通の中学生のまわりで起きる不思議な出来事が、まさかまさかの侵略の前触れで、それを主人公とその家族、友人、学校の先生らの協力を得て食い止めようとするお話。
終盤の、侵略者の手先であるはずの本郷令子との何とも言えない切ないやりとりがグッときました。
たぶん同じ作者だと思うのだけれど、同級生の女の子が円盤にさらわれて、いろいろあって最後に解放されて無事に戻ってきた彼女は、どことなく雰囲気が違っていた・・・。
みたいな話を小学生のころに読んだ記憶があるのだれどタイトルかわからないんです!もう一回読みたい。
タイトルと表紙からすると「本」にまつわる心温まるお話かな、と思ったのだけどこれが大間違い。といっても嬉しい間違いでした。なんとこの本、私の大好きなあるジャンルをテーマにした短編集でした。
できることなら予備知識無しで読んで頂きたい作品。
ある晩、隅田川に浮いているところを発見された男。身元を証明するものも、記憶も無い。いったいどこから来たのか・・・。(遭難者)
少年時代、あちこち見知らぬ地域を「冒険」してまわる二人。あるとき、もう使われていない防空壕に入ってみたところ・・・。(地下廃駅)
人生の切り替え(もしくはリセット?)の時期にさしかかった人たちのさまざまな選択を描いた短編集。
「選択」というほどのものではないか。それぞれに起こった出来事に確固たる決意の無いまま流されてゆく、というか。
40歳を目前にして、かつて憧れた男性の出席を知り、同窓会にいそいそと向かう女性。
15年の交際期間と3年の結婚生活を送った夫との関係を終わらせる女性が、夫以外の男性とほとんどまともな会話すらしたことが無いことに気づき、料金を払って一日デートを体験してみる。
などなど・・・。
どのお話も劇的なことが起きるわけでも、カッチリとした結末が待っているわけでもない。でもどのお話の主人公たちにも「がんばれ」と言いたくなる。
結婚を間近に控えたある日、さくらの前に「兄」を名乗る男性が現れた。さくらには「兄」などいるはずもなく、しかも彼は年下だった・・・。
先日同じ作家さんの、突然息子が現れる、という「傑作はまだ」というお話を読んだけれども今回はまさかの「年下の兄」が現れるので、ちょっと不思議要素もあり。
今の常識内での納得のいく真相が明らかになるのか、それともSFっぽい方向へ向かうのか、どっちかなあ、などと考えながら読めました。
主人公のさくら、結婚相手の山田さん、山田さんのご両親、さくらの妹のすみれさん、そして「おにいさん」。
みんながみんなほのぼのした雰囲気でお話は進み、それを乱す者もいないまま真相が明かされる結末へ向かう。人の気持ちは、ここに出てくる人たちくらいに柔らかくていいんだな、そうありたいものだな、と思いました。
大学を出てからずっと作家として、人付き合いのほとんど無い生活を送っていた「俺」(50歳)の前に突然現れた、一度も会ったことの無い息子(25歳)。
驚きつつも息子と過ごすうちに、今までに経験したことの無い様々なことに気づかされて行く・・・。
といってもこの主人公、それまでほぼ引きこもり状態だったので(作家なのでそれで生活が成り立ってしまっていた)、コーヒーの淹れ方や近所づきあいだったりを教えてくれたり、生き様ってほどではないけれど、人が生きてゆく上での心構えというか、「物事、こう考えた方がいいんじゃない?」みたいなアドバイスをしてくれる、とても頼もしい存在なのが面白い。
そんな息子のおかげで「俺」もよい方向へと変化してゆきやがては、派手ではないけれど「ああ、よかった!」と心から思える展開へと向かう。オススメです!!
小学五年の眠人(みんと)は、まともに働かずパチンコと酒に溺れる父親との二人暮らし。
将来に夢も希望も持つことなどできそうもない。
ある日眠人は、家にいるのが嫌でいつも過ごすことの多い近所の都立公園の東屋で一人の女子高生と出会う。そこで眠人は、彼女が奏でる三線のゆるやかなメロディーと、そののびやかな高音の歌声に魅了される・・・。
眠人をはじめ、親友の竜征や級友のさくら子などこのお話に出てくる人みんなが、押しつぶされてもおかしくない境遇のなか、決してくじけることなく必死になって生き続けている。生き続けているからこそいくつもの「出会いの風」が吹く。
悪人というほどの悪い人や敵のような人物は出てこなくて(最初はどうしようもない奴、と思っていた人にもよい変化が見られるし)、出だしの、眠人が厳しい状況の中生活を送っている小学生時代から出会った仲間を大切に大切に想い、やがてはみんなが立派な大人へと成長する、清々しいお話。
もしこのお話の中の人物に会えるとしたら。
さくら子さんもスミレさんも十分に魅力的すぎるヒロインなのはもちろんだけれども、ここはやっはり春帆さんにお会いしたい。彼女との出会いがあってこそのお話だから。
年は食ったけれど、まだまだ活力いっぱいのジジイ三人、子供のころからの仲間がご近所に起るいくつもの事件を次々と解決してゆく!
何回か見たことのあるドラマ版では、剣道の達人にしてリーダー格のキヨを北大路欣也さん、柔道家でぶっきらぼうではあるけれど正義に燃えるシゲを泉谷しげるさん、そして二人と比べ体力では劣るものの策略や機械いじりに関してはヤバいくらいにプロ級のノリを志賀廣太郎さん(残念ながら亡くられている・・・)が演じられていたけれど、原作を読んでいると彼らの声が脳内で見事に再現されるのが面白い!よほど原作に忠実に制作されたドラマだったのだなあ、と今更実感。
じーさんばかりではなくて、彼らの家族、特に生意気だけれど物事を冷静にそして的確に判断するキヨの孫の祐季、そんな彼と仲良くなってゆくノリの愛娘の早苗ちゃんたちも出てくるのだけれど、彼ら含めてみんなの会話が自然で、余分な描写が全く無いのでどんどんストーリーが進んでしまい、もっと解決に時間がかかるような難事件にぶち当たらないかなあ、とか思ってしまった。
読み終わった直後、もう一回ドラマを見たくなったし、もし見たらきっと、たぶん、間違いなくまたこの原作を読みたくなるはず。
それにしても、戦争したり人を傷つけたり殺したり国民の為でなく自分たちのことばっか考えてるエラい人たちの存在だけでなくても、身近なところにも悪い人がいっぱいいるんだなあと改めて思った次第。
よく商店街なんかでお年寄りを集めて健康セミナーみたいなのをやってるのを見るけど、この本読んだら「あー、そういうことか」と妙に納得。ひっかっかてしまうお年寄りもかわいそうだけれど、実に巧みだなあと思ったり。
ある事情で小さなどら焼き屋さんの店長をまかされた千太郎。
しかし、彼にはどら焼き作りへの情熱があるわけでもなく、ただ必要に迫られて店長を務めているだけだった。
ある日、店で働きたいという、吉井徳江と名乗る高齢の女性との出会いをきっかけに千太郎の気持ちに変化が現れる・・・
いまさらですが、昔から気になっていたこのお話、ようやく読みました。
「お話」ではあるけれど、この中で語られるつらいつらい出来事は現実に起きたこと。二度と起きてはならぬこと。
高校の教務課職員の火田七瀬は、校庭で野球部の練習中に空中のボールが理由も無く割れるという現象に出くわした。そのボールは、歩いていたある生徒に当たる寸前だった・・・。
「家族八景」「七瀬ふたたび」に続く七瀬シリーズ完結作!
それにしても、前作「七瀬ふたたび」で、せっかく普通の人間には無い能力を持つ同胞たちと出会えたのに、その大切な仲間ともどもあんなことになってしまったにもかかわらず、この作品の冒頭、何事も無かったかのように普通に高校の教務課職員として働いている・・・っていったいどういうことか、という大いなる疑問などお構いなしに話は進みます。
ボールは何故割れたのか?
ボールが当たるはずだった「彼」は何者かに守られているのか?
謎の失踪を遂げた彼の母親はどこにいるのか?
などなど「彼」にまつわる謎は深まるばかり。「それまでのことはどうなったの?」という疑問はいったん置いたままでも、読者も七瀬と一緒に謎を探る旅についていくことになります。
やがて明らかになる真実は、あまりにも壮大というか、そんなのありかっ!、というか、もうぶっ飛びすぎてるけど、こういう、こちらが全く予期しない方向に話が向かっていくときに味わう「ちょっと待って」という感覚こそが読書の醍醐味でしょう。
読み終わった後、「自分」て何だろう、「自分」の生きている「世界」とは本物なのか?今ここでこうして生きているということはどういうことなのか?とかいろいろ考えさせられるお話でした。
前二作はドラマ化されたけれど、これはちょっと難しそう。でもアニメ化ならできるかな。「パプリカ」ができたんだから、こちらもぜひアニメ化希望です。
タイトルに「健康法」とはあるけれど、まさかね、と思っていたらかなりの割合を健康ネタが占めていたのにビックリ。
しかも思わず笑っちゃう箇所多数あり!
だいぶ前に中山康樹さんの「超ジャズ入門」という、ジャズに詳しくなくても文章があまりにも面白くて笑っちゃう本があったのだけれど、ジャズの文章書く人は楽しい方ばっかりなんだろうか。
「知人の鼻毛、あなたは指摘できますか?」のところが一番笑ったかな。
先日読んだ「家族八景」の続編。
人の心を読むことのできる七瀬が、お手伝いさんとして八つの家族を渡り歩き、それぞれに隠された秘め事を目の当たりにした後のお話。
前作では「超能力を持つ人にとっては世の中はそう見えるわけか」などと思う部分もあったが、今回はそんなのんきな雰囲気ではなくて、 のっけから土砂降りの嵐の夜、崖沿いを走る列車の場面、脱線しちゃうんじゃないかという危険な状況。
そしていくつものピンチにあいながらも七瀬と同じ、または別の種類の能力を持つ仲間を得るが、人間には無い能力を持つ彼女たちの存在を良しとしない者たちもいた・・・。
まったく、七瀬たちを攻撃するなんてヒドい奴らだと思っていたけれど今回読み直していたら違う思いが。
もし、近所に住む知人から「こちらが考えていることを何でも言い当てる人たちがこの街に現れたみたい、あなたも気をつけたほうがいいよ」などという話を聞いたとしたら。
ほどなくして隣人から「見知らぬ者の訪問を受けたが、思っていることを先回りして言われた、恐ろしかった」と言われたとしたら。
凄い、と思うと同時に彼らには近づきたくない、関わりたくないと考えるのではないか。
そしてその考えを皆で共有し、やがてはその者たちを「排除」するべしという結論に達するのではないか。
そしてその結論が「正義」であり、能力者たちが「悪」であることに誰も何の疑いを持たずに実行に移すのではないか・・・。
といったようなことを今回初めて考えた。すると、敵とか味方とか正しいとか正しくないとかいろいろいろいろ考えてしまった。
それにしても前作の「お手伝いさん七瀬」から今作は「戦う七瀬」に変貌したけれど、あの結末はなんともやりきれない、けれども美しい。
ある借家に入居したさまざまな人たち、それぞれのお話。
この借家に入る人、その誰もが「わけあり」な人ばかり。年の大きく離れた妻子持ちの男性客と駆け落ちした飲み屋の雇われママだったり、まだ育児で大忙しな最中に、妻の同意を得ないまま出向に応じた夫だったり。
「家」そのものが魔力を持っていて、入居する人間がおかしくなるおっかないお話しかと思っていたら、そういうお話ではなかった。
あくまで、さまざな事情からいったん逃れてきた人たちが、この家で何を考え、どこへ向かおうとするのかを描く短編集。
こんなに読みやすい本は無い。だって「読書」してるのではなくて、塙さん、土屋さんのお二人が目の前で漫才をしてくれてるかのようだから。
しかも一つのネタが4ページ無いくらいだし。
読む前は、漫才って文章だとどう感じるのかな、と思っていたけれど、そんなことは気にならずにあっという間に読み終えちゃった。文章でも大笑いできたし。
この本は毎週放送されているラジオ番組のオープニングでやっている漫才を書籍化したものだそうなので、一つのネタはすぐに読み終えちゃうけれど、もっと長い漫才も文章で読んでみたい。でも電車の中とかだと笑いをこらえるのが大変かな。
人の心を読み取ることのできるお手伝いさん、七瀬が目にする八つの家族のさまざまな人生模様。
実際に七瀬さんのような能力者がいたら、この作品中の七瀬さんのように考え、行動するのだろう、と妙に納得しながら読みました。
なぜなら相手の心がわかるからといって、それを言い当ててしまえば、気味悪がられるに決まっているから。それどころか「普通の人間と違う」ことがおおっぴらにされれば、自由は奪われて実験材料にでもされてしまうから。
あと、このお話、かわいいお手伝いさんの七瀬が主人公なので、どの家族でもいやらしい男どもの好奇の目で見られる場面があるけれども、そこのところが残念ながら非常にリアルだなあ、と感じました。
それにしても、最終話「亡母渇仰」のラスト、熱くなります。
さまざまな状況のなかで、降りかかった困難をなんとか好転させようともがく人たちを描いた九つのお話。
初めてこの作家さんの作品を読みました。
ニヤリとさせられるところ、そうきたか!、とビックリするところなんかがあって、しかもどのお話にもその最後には清々しさを感じさせてくれ結末が用意されてる一冊。
いくつかしっとりとした雰囲気のお話もあるけれど、それらも柔らかい終わり方なので心地よいです。
あと、124,125ページは大笑いでした!
何もかもを知り尽くした玉ちゃん流、50代の生き方あれこれ。
たくさんの芸能人のいるなかで『この人は正直に話してる』なあと信じている方がたっぷり語りつくしてくれる最新作。
ほんと、そういうことまで言っちゃっていいの?ということもあったりして。
この本を読んでいると「読んでいる」というより、玉さんがすぐそばで直接語りかけてくれているようで、しかもその内容がどれもこれも「うんうん、そうそう」とうなづくことばかり。
「はじめに」にもあるように「50代を生きることはとても大変で、難しい」けれども、後半には、ゴールは意識しなくていい、バタバタ生きる必要はない、身の丈に合った生き方でいい、などなど、そうだよな、とホッとさせてくれて、ほどよくがんばればいいや、と思わせてくれる貴重な一冊です!!
夫が毎年誕生日にプレゼントしてくれるのは動物のぬいぐるみだった。今年はイグアナ。とくに動物好きでもないのに。
何もかもが夫のいいなりの妻だったが、ある日スーパーの帰りに立ち寄った公園で出会った小さな犬が彼女の運命を大きく変える・・・(囚われて)
「もしもし?湯川さんのお宅でしょうか」
ある夜かかってきた電話は、じつに二十一年ぶりの中学時代の同級生だった。しかし特別親しかったわけでもなく、あまりよくない出来事の思い出しかない女だった・・・(同窓の女)
と、二つほどこの短編集に収録されているお話を紹介しましたが、ほかのお話どれもこれも引き込まれちゃうし(お話によってはニヤリとさせられたり)、最後には「そうきたかっ!」と思わず唸ります。
とくに「路地裏の家」と「天使の棲む家」にはやられました。ぜひ予備知識無しでどうぞ。
実家の親父が借金を作ったものだから仕送りも期待できず、彼女にはフラれ、持ち金も減り、あと少しで二十歳というのに何のいいことも無い学生の「ぼく」。応募したバイトに行ってみると、そこは小さなポルノ出版社だった。
踏んだり蹴ったりの学生さんが、さらに踏んだり蹴ったりな状態になってしまうお話でした。
確かこの作者さんのエッセイは「大笑いできる」と昔の同僚が言っていたのを思い出して購入したところ、これはエッセイではなくて小説だったのだけれども、読み始めたら「この学生さん、この先どうなっちゃうんだろう?」と気になってあっという間に読み終えました。
目的の「大笑い」は達成出来なかったものの、大いなる収穫。
青春小説というと「何かに打ち込んで挫折を乗り越えて最後には大切なものを掴み取る」ストーリーだろうと思っていたのが、見事に違う方へと進み、予想をいい意味で裏切ってくれました。
ものごとキレイなことなどそんなに無いし、キッチリとした結末なんてのもあり得ない。はっきりしない、モヤモヤしたものがズルズル続くのが現実だし、自分に影響を与えてくれた人、ちょっと気になった人なんかも気がつくと視界から消えている。
読み終えたあと、そういえばあの人、今ごろどうしてるのかな、などと遠い昔のひとを思い出す。
事故で最愛の母を失った朔也は、生前に「自由死」を望んでいた彼女の本当の心を知るべく、VF(ヴァーチャル・フィギュア)として蘇らせて対話を重ねてゆくのだが・・・。
うーん、もう本物の母親は存在しないのだからAIで再現してみたところで「姿かたち、受け答え」が同じだけの「別物」に過ぎないから作ったって意味無いのでは?と思ってしまいそうだけど「姿かたち、受け答え」が同じ人物を再現できる技術があるならば作りたくなるのももちろんわかる。
近未来を舞台にしたお話だけれども、およそ楽しそうな未来なんかではない。
なぜなら朔也はもちろんのこと、亡くなった母親、朔也の同僚の岸谷、そして母親が職場で親しくしていたという三好。みんながみんな生活が大変そうだから。
そんな、このままいくとやっぱりこうなっちゃうのかな、と思わせる社会を舞台としながらも読んだ直後にはほんわかとした気持ちにさせてくれたのは嬉しい。
狂信的な母親の歪んだ教えを受け、高校ではいじめられっぱなしのキャリー。だが彼女は常人には無い「力」を秘めていた・・・。
キャリーは普通の女の子だったのに。
母親を愛して、母親から愛されたいと思っていた女の子だったのに。
学校一の人気者から高校の一大行事である「春の舞踏会」の相手を申し込まれたらもちろん喜ぶに決まっている普通の女の子だったのに。
それなのに、あんなことになるなんて・・・としか言いようの無いお話でした。
しかもその「あんなこと」が尋常ではない!「ちょっと待ってちょっと待って」と言いたくなるような大惨事が待っています。
「能力」を持っているが故に苦しむ、ということで思い出すのはやはり火田七瀬さんか。他人の思考がわかってしまう辛さ。子供の頃なら「わー、便利!」なんて思うだろうけどいちいち周りの人間の感情が自分に入り込んできたら疲れてしょうがないはず。確か藤子F先生の短編にもそういう話があったっけ。
今更ながらこの方の本を初めて読みました。やっぱり書店員って独特な職業だなあ、と思いました。
本屋さんならではのあれこれがいっぱい語られているのだけれどその中でひっかかったことがひとつ。
毎日たくさんある作業のうち「明日発売の雑誌には、目にも留まらぬ速さで付録を挟み込み、紐をかける・・・」というところ。
えーっ!大手書店は発売前日に雑誌が入荷するのかっ?!羨ましい・・・。それだったら前の日のうちの付録つけはもちろん、当日の朝に「お客様の予約雑誌なのに1冊のみ入荷なのに破損入荷だ!」とかでドタバタしなくて済んだのに・・・。
月で発見された宇宙服を着た死体。その死体はどこの基地の所属の人間でも、地球のどの国の人間でもないだけでなく、なんと5万年前にすでに死亡していた・・・。
この歴史上類を見ない大問題の解決に向けて召集されたヴィクター・ハント博士をはじめとする大勢の学者たちが、その後もあとからあとから現れる難問に対して説明のつく答えを求めてひたすら考察するお話。
あそうそう、この作品は古典的ハードSFでありながら、立派なミステリでもあります。ある大きな謎が解明されたところで「ああ、そうか、そうだよな!!」と手をたたきたくなる場面ありです。
その昔、深田恭子さん主演でドラマ化、その後にアニメ化もされたミステリー。
こんなに面白い刑事さんいないよ、と思いつつ毎回楽しく見たドラマ版だったけれど、この原作だと主人公は男性。
読む前は、裏表紙の紹介文に「キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた富豪刑事こと神戸大助が・・・」とあるので、ひょっとして彼の高飛車な態度で話が進んでいくのか、と勝手に想像してしまったけれどそんなことはなく、常識と正義をしっかり持った人物だったので安心。ただし金銭感覚があまりに一般人と違うからこそ飛び出す発想がおかしかった。
できればその後の大助の活躍も読んでみたい。鈴江さんとはどうなるのかも気になるところ。
この方の小説を初めて読みました。短編集で、どのお話も20頁無いくらいのものではありましたが、そのどれもが濃い、というか読みごたえずっしり。かといって、じっくり細かく書き尽くしているわけではなく、さらっと読み終わってしまう長さ。なのに深い。これが「小説」なのだ。
何気ない日常のドラマが描かれているものだと勝手に想像していたら、これまたとんでもない間違いで、かなりすごいことになっているお話、多いです。「かわうそ」、「犬小屋」、「大根の月」とか特に。
実(みのる)が仲の良い同級生二人と夜の校庭でUFOを目撃したあと、帰宅すると母親から「あなた、どこの子?実なんて子はうちにはいません」(もう一つの地球)
100年後に蘇生された女子高生が見た、現在とはまるで違う社会とは・・・。(二一世紀高校生)
震度3ほどの地震が起きた後に現れた見知らぬ先生、しかも他の生徒たちはその先生を知っていて自分だけが知らない。
おまけに家にも見知らぬ女がいてごく普通に「おかえりなさい」と言う。聞くと、いるはずのない「姉」だという・・・。(幻影の終わり)
ジュブナイルというと、やはり「時をかける少女」が思い浮かぶのだけれど小学校高学年、中学校のころだったか、よく図書室や図書館でこういう本を借りて読んでいたような気がします。
この本は、古本市で見つけて、ひょっとして昔読んでもう一度読みたい話があるかも、と思って購入。お目当ての話は無かったけれど、初めてSFに接したころのワクワク感をもう一度味わたので大満足。
ちなみにもう一度読みたいお話、タイトルも作者も覚えてなくて、宇宙人にさらわれた、仲の良い同級生の女の子を心配する男の子、というものだったはず。
ラスト、無事に女の子は解放されて戻ってきたので「よかった!」と思ったけれども彼女、どことなく雰囲気が変わっていて。大人びた、というか・・・というストーリーでした。ずーっと後になって「そういうことか!」と気づきました。ああ、もう一回読みたい・・・。