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「晩夏に捧ぐ  成風堂書店事件メモ(出張編)」大崎梢 東京創元社


先月読んだ「配達あかずきん」の続編。杏子が勤める成風堂書店に昔いた同僚美保から、彼女が今働いている地方の老舗書店で起きた幽霊騒ぎを解決して欲しいとの便りが届く。あまり乗り気ではないものの、杏子は休暇を利用して、アルバイトながら今まで幾つかの「書店ならではのミステリ」を解決してきた多絵を連れて行くが・・・。

今回は長編。サブタイトルにも<出張編>とある通り、前作のような日常業務中に起きる「ちょっとした」謎とは違って、何と27年前に起きた、ある作家が殺された事件の真相が暴かれる。
長編も出したんだ、ということで読んでみたけど、やはり舞台を移し、新顔の美保さんも加わってパワーアップして前作とはまるで違う印象。が、せっかく出てきた美保さんにはもっと活躍して欲しかった。あとは例によってアルバイトの多絵ちゃんだけが先に真相にたどり着いちゃって主人公である杏子が「???」のまんまになってしまうのがちょっとだけ不満か。でも「名探偵」だからこそ多絵を連れて行ったのだからそれでいいのかな。
どうせなら多絵にもっともっと焦点をあてて書いてもらったらいいのかも、とも思う。

あと、書店に幽霊・・・という設定は素晴らしいので、これ、ミステリじゃなくてまんま正体は幽霊にしてもらって、ファンタジーにしてもらっちゃってもこちらとしては大歓迎。最後まで読んで「犯人おばけかよ!!」って怒る人はいるかもしれないけど。
次回は再び短編集になるとのことで、大掛かりな事件じゃないだろうけど、そこがまた楽しみなところ。書店員のはしくれとしても。 (061215)



「しゃべれども しゃべれども」佐藤多佳子 新潮社

一流の噺家を目指す「俺」にはまだまだ勉強することがたくさんある。が、あることがきっかけで数人の変わり者たちに「話し方」を教えることになってしまう・・。

主人公の一人称の語りがスラスラ読めた。さすが噺家だなあ、と思ったけれど、これを書いた作家さんがさすがなのだ。関係無いけどテレビや映画で、非常にイヤな性格の人物が出てきたりすると「この役者は本当にこういうヒトなんじゃないか・・」と思ってしまうこともある。(例 登場シーンは少ないけれど「マンハッタン」のジルことメリル・ストリープ。でも役者本人の「演技力」を誉めなきゃだめか。)

さて、主人公の開く「話し方教室」に集まったのはそれぞれに問題を抱えた4人。でもこれは一人ひとりの難題をこうやって解決していきますよ、という流れでもなく、ただただ「俺」が空回りして、悩んでいくので、最初スラスラ読み進められたのにだんだんと、この話、ちゃんと終わるんだろうかという気持ちも出てきてしまう。もちろんしっかり終わるけど。
そして読み終わった直後にはほのぼのとした気持ちにさせてくれる。
いろいろなことが次から次へと起きてああでもない、こうでもないとやっているうちになんとか進んでいく、普段の生活もそんなものか。 (061207)



「配達あかずきん」大崎梢 東京創元社

都会のある書店で起きる、書店ならではのミステリーを女性社員杏子と大学生のアルバイト、多絵が解いていく。

というか、杏子は主人公ではあるけれど「謎解き」役はバイトの多絵なので何となく「シャーロック・ホームズ」のよう。5編収録。
いつだったか新聞で紹介されてずっと気になっていたので取り寄せて購入(自分の職場には在庫無し・・。)。
派手なアクションなんかは無いけれど、軽くドキドキできる暗号解読話もあるし、オビにあるとおりの「胸を締め付けられるような」ドラマもあって、今後はどんなふうな話が飛び出してくるか楽しみ。ぜひ第二弾も読んでみたい。
以前から本屋を舞台にしたテレビドラマって無いなあ、と思っていたので、小説という形ではあるけれど、こうして接することができて嬉しい。自分で考えてみた書店ネタのストーリーは大げさになりすぎてどうにもまとまらなかった。(061109)



「重力ピエロ」伊坂幸太郎 新潮社

一見無意味に見える連続放火とその付近に必ずある落書き。「私」は、容姿に恵まれ風変わりな弟「春」と犯人を突き止めようとするが・・。

うまく説明できないけどこれは単なる犯人探しではなくて、弟の「春」そのものが描かれているお話だと思う。と思ったら後半、「私」の行動にも謎がでてくるし、父親も病にかかりながらも十分存在感を出している。(「・・万引きする少年も死刑。法律でそう決めてしまえば絶対やめる」なんてセリフもあり。)
「私」が熱中していく謎解きもあるけれど、読み終わった後に考えさせられるのは、それこそ春が毎日毎日、何年も考え、悩み続けたある事実だ。(061029)



「終末のフール」伊坂幸太郎 集英社

5年前に、「8年後に小惑星が地球にぶつかり、まず生存者はあり得ない」ことを全世界が知らされている世の中の、仙台のある団地の何組かの住人たちの出来事。

終末というとまず思い出すのが小学生の頃にテレビで見た「地球最後の日」というアメリカのSF映画。だから「地球滅亡」から逃れるための努力を最後の最後まで頑張ってギリギリで何とか脱出・・という展開を思い浮かべてしまう。
が、このお話は設定はSFでも、見事な解決策が見つかって無事生存なんていう具合にはいかず、登場人物たちの誰もがごく近い未来の「死」を受けとめているのだ。
家族の話だったり、友人と再会したりと、ごく日常の会話で進んでいくので、終末ものなのに科学者やヒーローも出てこないのでSFが苦手な人にも楽しめるのではないかと思った、いや、そんなことではなくて、単に設定がSFというだけでこれは「死」をどう受けとめるかという話なのかもしれない。
ところで自分も優柔不断なところがあるので「富士夫君」にはがんばってもらいたい。(060903)



「トワイライト」重松清 文藝春秋

小学六年のときに「未来」の自分たちに向けて埋めたタイムカプセルを掘り起こしに集まったかつての同級生たち。彼らは皆、つらい現実の壁にぶち当たっていた・・。

短い期間に起きた出来事ではあるけれど、過去の主人公たちの様子も出てくるし、ある事情で現在には姿を現さない担任の先生の「問いかけ」も、主人公たちにはもちろんの子と読む側へも伝わってくるので充分読み応えあった。ちょうど彼らと自分もほとんど同じ年齢だし。
「ドラえもん」、というか、「ジャイアン」というキャラクターをこんなふうに使ったのは初めて見た!(060908)



「ゴールデン・マン」フィリップ・K・ディック 早川書房

短編集。田舎道のさびれたガソリンスタンドをやっている老人に、ある晩、妖精の集団が訪れて・・という話が何ともほのぼのしていた。(060908)



「刑務所の中」花輪和一 講談社

実際に塀の中に三年入っていたという著者が自らの体験を漫画化。

普段ぶらぶらあちらこちらに散歩のできる生活ってぜいたくなのだなあ、とつくづく思う。罪を犯したら自由が無くなるのは当たりまえか。でも食事・睡眠を規則正しく与えられる生活も、考えようによっちゃぜいたくか。(060801)



「航宙艦消失!」メル・ギルデン 早川書房

休暇中のエンタープライズに艦隊司令部より緊急の任務が与えられるが、それはフランクリン・ケント評議員といういけすかない政治家の護送任務だった。
が、その護送先である第12宇宙基地でカーク艦長たちを待ち受けていたオーメン教授こそ、近年、宇宙連邦のみならず宿敵クリンゴン帝国にも起きている航宙艦消失事件の鍵を握る人物だった・・・。

スタートレック小説。映画やテレビにはなっていないオリジナル長編。昔、結構読んだけれど、ほとんど処分してしまった。先日、古本市で見つけてなつかしかったので一冊買ってみました。

今回も大掛かりな事件をカーク、スポック、マッコイたちエンタープライズのクルーがそれぞれの得意分野でがんばって解決するのだけれど、一度、事件の起こらない話(?)も読んでみたくなってしまった。というのはやはり、論理一点張りのスポックと皮肉屋マッコイの会話がおもしろいからであって、1冊分でも読めそうだ。(060707)

マ「これはまた、1冊分も私たちにおしゃべりして欲しいそうだよ、スポック。どうする?」
ス「非論理的ですね。おしゃべりだけではストーリーがうまく展開していきません。それに、ドクターのあまり聞くに値するとは思えないお話にまるまる1冊分おつきあいするのは苦痛以外の何物でもありません」
カ「まあまあ。でもたまにはいいんじゃないか?いつも危ない橋ばかり渡っているから、のんびりおしゃべりだけっていうのも」
ス「非論理的ですね。我われ3人が延々と無駄な会話を続けるストーリーでは本が売れなくなるのは目に見えています」
マ「別にいいじゃないかスポック、少しくらい売れなくなったって」
ス「ドクター、あなたは中小書店の危機的状況を全く認識していませんね」
カ「まあまあ」



「ぼくは本屋のおやじさん」早川義夫 晶文社

音楽の世界で生きてきた著者が突然引退して書店を開き、そこで感じたさまざまなこと。

だいぶ前にタイトル見て、なんとなく気になっていた本。職場のパートさんがかしてくれた。驚いたことに、今、自分を含めおそらく中小書店員が思っていることと同じことをこの方は、20数年前に書いていた。

たとえば

 などなど。
たまに出版社の営業さんから「この業界、なんにも変わっちゃいないですよ」と聞かされるが、確かにそうなんだと納得してしまう。それにしてもこの著者の文章を読んでいると「この人はなんて正直に書いているんだ」と思う。そんな中で時々はっとする文が飛び出してくる。自分も一冊買っておこうか、と思う。 (060614)



「フレドリック・ブラウン傑作集」ロバート・ブロック編 星新一訳 サンリオ

なくしたと思ってた本がついに発掘された、というか普通に本棚におさまっていたのに長年気づかないまんまだった。もうすっかり紙が茶色っぽくなってしまっていたけど発行が1982年だから仕方ないか。

今回読みなおした中で文句なしによかったのが「星ねずみ」。変わり者の科学者の家に住み着いていたねずみが、ある理由から言葉を話せるようになり・・というお話。切ないラスト、何度も読み返してしまう。
りゅうがもし話せたら・・・お話にはならないか。「ねむいや」くらいしかしゃべりそうもないから。
そういえば犬と会話できる少女の「愛のひだりがわ」、もう一度読みたくなってきた。(060517)



「アリバイのA」スー・グラフトン

32歳の女性私立探偵、キンジー・ミルホーンのもとに、夫殺しの罪の刑期を終えたばかりの女が、真犯人を突き止めて欲しいと訪れる・・。

久しぶりに読んだミステリ。バリバリの女探偵かと思ったら、疲れちゃったり泣いちゃったりもしちゃうのでかえってリアル。というか探偵なんていう仕事も大変だな、と思った。
この、「A」が1作目で、このあとB,C,D・・・とシリーズになっているそうなのでいずれ読んでみよう。 (060513)



「キス・キス」ロアルド・ダール

イギリスの異色作家として知られるダールの短編集。

小学生高学年か中学の頃、夜の11時くらいに放送されていた「予期せぬ出来事」という海外ドラマがありまして、がんばって夜更かしして見たものでした。
ラスト、主人公の運命をどうにもできる、一話完結ものというのが珍しかったのでしょう。それに加えて毎回楽しみだったのは、オープニングタイトルが終わるとすぐに薄暗い部屋の暖炉が映り、おもむろに「ごきげんよう、原作者のロアルド・ダールです」と作者自身が登場してその回の話を書くきっかけとなった出来事なんかを少し紹介してから「この話の結末をあなたがどう解釈なさっても結構です。しかし、最後の一分間、それはあなたにとって予期せぬ出来事なのです」と決めゼリフ(?)を言うところでもありました。

で、本を読んでみたのですが、カッチリとオチがついてて「ああ、これ昔見たやつだ、懐かしいや」というのもあったけど、知らないストーリーで「最後どうなるんだろう?」と読み進めたら、とくにドンデン返しも無いんだけれどとんでもない方向へ話がいってしまってそのまんま終わっちゃって「なんだこりゃ!」と驚いた話もありました。だから当然収録されてると思い込んでいた、傑作と言われててテレビ化が2度、タランティーノさえも映像化したという「南から来た男」が無くっても満足満足。 (060414)



「さあ、気ちがいになりなさい」フレドリック・ブラウン

「13のショック」と同じく、早川書房60周年記念出版の異色作家短編集。

ブラウンはいろいろ読んだつもりでいたけれど、人間が一人もいない星をさまよい歩く男の話、「みどりの星へ」は初めて読んだ。せつない話だ。
昔、サンリオかどこかで星新一さん訳で短編集が出て、買って何度も何度も読んだものだけれどどっかいっちゃった。 (060228)



「13のショック」リチャード・マシスン

「激突!」他たくさんの変わったお話で知られるマシスンの短編集。

てっきりあの「2万フィートの悪夢」という、嵐の空を飛ぶ旅客機の翼に怪物がいて、エンジンを壊してるのをただ一人目撃してしまった男の話が収録されてるかと思ったら未収録だった、残念。とはいっても未知の惑星に着陸したら、自分たちのと同じ型の宇宙船の残骸があり、入ってみると自分たちの死体が・・という「死の宇宙船」は収録されていた。
あと、たった3ページの「レミング」も、二人の人間の会話だけなのに妙におっかないし、「次元断層」の最後の一行!そうくるとはわかっちゃいたけどやっぱりコワイよ。 (060228)


「国家の品格」藤原正彦

日本人は金儲けなんかに走るのではなく、本来持っているはずの、自然を感じ、大事にする情緒や誠実さ、卑怯を憎む心などを育てていかなければならない。

しばらく前に出版されて、いつのまにかベストセラーとなっている新書。どこかの講演をまとめたものとのことだけど、実際にこの内容を耳で聞いてみたかったと思うほど読み易いのが売れてる原因か。
世間はライブドア事件なんかでバタバタしているから余計「そうだよな、金儲けが一番大事じゃないよな」と誰でも感じるはず。(そこそこの金はもちろん欲しいが・・)
他にも、小学校から英語なんか教えないで、日本人なんだからまずは日本語をキッチリ、とか道徳を子どもに教えるには理屈でなく「ダメなものはダメ!」とピシャっと叩き込むことの重要性なんかのところも「うん、うん」とうなずいた。
この本、日本人全員に配ってもいいくらいの本だと思う。 (060228)

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