story14

オレンジ色の目の転校生

タロウくんのクラスに、イガラシミキという転校生がやってきました。
とてもかわいくて、男の子とも、女の子ともよく話すので、すぐにクラスの人気者になりました。
ミキちゃんはお勉強もよくできました。ミキちゃんは、難しくてみんなが頭をかかえてしまうような問題でも、スラスラと正しく答えるので、先生も満足そうに「みんなもイガラシさんのようにちゃんと答えられるようにがんばってね」
 といつも言っています。 「それにしてもミキちゃんて、すごく頭がいいよね」
 ある日の帰り道、タロウくんは仲良しのヨシオくんと一緒に歩いていました。ヨシオくんが言いました。
「だってさ、今日の理科の時間に、教科書にのっていないことまで答えて、先生もビックリしてたからね」
「うん、そうだね。何でも知っているはずの先生が、困っていたね」
「きっと、おうちで勉強ばっかりしてるんだよ」
「そうかなあ・・・」
 タロウくんは違うような気がしました。ぼうっとしたままのタロウくんに、ヨシオくんが面白そうに言いました。
「あっ、タロウくんもしかして、ミキちゃんのこと、好きになっちゃったんだ!」
「そ、そんなことないよ!」
「本当かなあ?明日みんなに言っちゃおうっと」
「ダメだよ、そんなこと言っちゃ」
「ごめんごめん、言わないよ。じゃあね、バイバイ」
「バイバイ」
 ヨシオくんと別れた後も、タロウくんはミキちゃんのことが気になってしかたありませんでした。ミキちゃんの顔を思い出すと、ただきれいなだけではなくて、他の女の子とはまるで違う感じがするけれど、それがどうしてかがわかりませんでした。

タロウくんがおうちの近くの公園まで来ると、ベンチに、いつも学校で席がとなりのサチコちゃんが一人でさびしそうにポツンと座っていました。
「サチコちゃんどうしたの?」
 サチコちゃんはいつもの笑顔と違って、こわいものでも見てしまったような顔をしていました。
「さっきね、あたしが一人で帰るときに、ずっと前の方をミキちゃんらしい女の子が歩いていたの。そしたらね、知らないおじさんが突然現れてミキちゃんの腕をつかんでどこかに無理やり連れて行こうとしてるみたいなのよ」
「きっとそれは誘拐だ!それでどうなったの?」
「うん、それでね、ミキちゃん逃げなきゃ、って思ったらちょうどそこが曲がり角で、二人ともスッと曲がっちゃって見えなくなっちゃったの。そしたら角の向こう側がピカッと光ってあたし、走ってその曲がり角まで行ったら・・・」
「どうしたの?」
 サチコちゃんはそのときに見たことを思い出して泣きそうな顔になっていたのですが、ぐっと我慢して答えてくれました。
「ミキちゃんはいたんだけど、おじさんはいなかったの。そのあたりのどこにもいなかったの。まわりに隠れる場所なんてひとつもなかったのよ。でねミキちゃんのすぐ正面に、大人くらい、ちょうどおじさんくらいの大きさの煙がボワッと浮かんでいたの」
「煙?」
「うん、でね、あたしが「ミキちゃん大丈夫?ヘンなおじさんにつかまらなかった?」って聞いたら「ああ、あのおじさんなら、もういないよ」って、だんだん消えていく煙を見ながらちょっと笑いながら答えたのよ。、ミキちゃんの目、オレンジ色に光っていたの。あたし、こわかった」

 それからしばらくたったある日の夕方、用務員のおじさんが学校の見回りをしていると、裏門の近くにあるごみ置き場が燃えていました。用務員のおじさんはバケツいっぱいの水をかけて火を消そうとしました。でも、火があまりにも大きく燃え始めていたので困っていると、ちょうどそこにミキちゃんがやってきました。おじさんは「早く!誰か呼んでくれ!」
と叫びました。するとミキちゃんは平気な顔をして
「こんなの、大丈夫よ」
と言って、ポケットから何か小さな粒を取り出して
「えいっ」
と、火の中に投げました。
 するとどうでしょう、あんなにぼうぼう燃えていた火が、あっという間に消えてしまいました。
「ほらね」
 おじさんがキョトンとしているとミキちゃんは「早く図書室に戻って続きを読まなくちゃ。まったく、気が散っちゃったわ」

と言ってトコトコ歩いて行きました。
 おじさんは、火が消えてよかったよかった、と思いましたが、このことは誰も信じてくれないだろうな、とも思いました。おじさんがさっきまですごい勢いで燃えていたごみ置き場をぼーっと眺めながら、このことを職員室の先生に話したものかどうか迷っていると、「いけないいけない、消すの忘れてた」と言いながらミキちゃんが戻ってきました。
 おじさんはこう聞きました。
「きみはさっきの女の子だね。いったいどうやって火を消したんだい?それに今言っていた、消すの忘れてた、ってどういう意味だい?」
 ミキちゃんはおじさんのすぐそばまで来てから答えました。
「あら、あんなちょっとの火を消すくらい簡単よ。ママに教わったんだもの」
 おじさんは、またキョトンとしています。そんなおじさんにおかまいなしにミキちゃんは続けてこう言いました。
「それとね、消すの忘れてたっていうのはね、おじさんの記憶よ」
 この女の子は何を言い出すんだろう、と不思議に思ったおじさんでしたが、いつの間にかミキちゃんの目がオレンジ色に光りだしていたのには驚いてしまいました。でも、驚いたのはほんの一瞬でした。気がついてみると裏門のごみ置き場のそばにいるのは用務員のおじさん一人でした。何かがまぶしかったような気がして、おじさんは目を1,2度ぱちくりとしましたが、何がまぶしかったのかは思い出せませんでした。

 次の日の授業中、突然ミキちゃんが立ち上がってみんなに向かって言いました。
「あたし、また引越すの。みんなとさよならなの」
「えー!」
「どうして?!」
「せっかく仲良くなれたのに」
 みんなは驚きました。でも一番驚いたのは先生です。引越しの話なんか全然聞いていなかったからです。
 ミキちゃんは落ち着き払った様子でクラスの全員を見て、目をオレンジ色にピカっと輝かせて
「さようなら」
とニッコリすると、教室から出て行ってしまいました。
 みんなは最初はビックリしていたのに、ミキちゃんがいなくなってしまうと、もと通り勉強を続けていました。先生もです!
 タロウくんはあんまり不思議なのでミキちゃんを追いかけて教室から出て行きました。

「タロウくん・・」
 廊下を歩いていたミキちゃんが振り返りました。
「ミキちゃん、いったいどういうことなんだい?なんで教室のみんなはミキちゃんが出て行ってもなんにも言わないんだい?」
 ミキちゃんは不思議そうな顔をしてひとりごとのように言いました。
「おかしいわね。どうしてタロウくんだけ効かないのかしら。ママに教わった通りにやったのに・・。まあいいや。じゃあね」
ミキちゃんはトコトコと廊下を走って行ってしまいました。
「こらっ、早く戻りなさい」
タロウくんは先生に怒られてしまいました。廊下にはタロウくんしかいません。
「先生、ミキちゃんが」
「ミキちゃん?それは誰なの?」
「イガラシミキちゃんだよ。いま、ここで僕と話していたじゃないか!」
「何を言ってるの、ずっと一人でそこに突っ立っていたんじゃないの」
「えっ?」
「いいから早く教室に戻ってらっしゃい」

 おかしいなあ、と首をかしげながらタロウくんが席につくとクラスのみんなはいつも通り、何事もなかったかのように勉強をしていました。タロウくんは、となりの席のサチコちゃんならミキちゃんのことを覚えていると思ってそっと話しかけてみました。
「ミキちゃんがさあ」
でもサチコちゃんはヘンな顔をして
「誰?その子」
とそっけなく聞き返すだけでした。
「授業中は勝手におしゃべりをしてはいけませんよ」
また先生に怒られてしまいました。

 みんなミキちゃんのことを覚えていなかったのでタロウくんは誰にも話すことができませんでした。だから学校が終わると、いっしょうけんめい走って帰って、ママに全部話しました。

 ママはタロウくんの話を「うん。うん」とうなずきながら全部聞き終わると、こう言いました。
「やっとわかったわ。ミキちゃんとその家族ね。私たちが探していたのは。確かミキちゃんの名字はイガラシさんだったわね?」
「うん、そうだよ」
 タロウくんのママは学校名簿でミキちゃんのおうちの場所を確かめると、急いでお出かけのときの服に着替え始めました。
 あっという間に着替えて戻ってくるとママは真剣な表情で言いました。
「ミキちゃんとその家族はね、この地球を征服しようと狙っているアルファ星のスパイなの。あなたのおかげでようやくわかったわ。ありがとうね。ママはこれからミキちゃんと家族を皆殺しに行ってくるわ。この地球をそう簡単にはやつらに渡さないわ」
そしてタロウくんのママは目を緑色に輝かせて言いました。
「だってこの地球を征服するのは、私たちベータ星人なんですもの。いい?もしママが戻らなかったら、外国で活動しているパパに連絡をして、応援に来てもらうのよ。それまではあなたにまかせるからしっかりするのよ」
「はいママ!」
 タロウくんの目も、タロウくんのママと同じくらい緑色に輝いていました。
                                          

                  
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